「重力とは何か」-大栗博司

「重力とは何か」 大栗博司 幻冬舎新書
昨年5月に出版された本ですが、夏に一回目挑戦して挫折し、秋にもう一度読み直してこの冬ようやく紹介できるようになりました。小学生では歯が立たないと思いますが、中学2,3年ならなんとか読めるのではないでしょうか。内容が理解できなくても、知的好奇心を持つことのできる人間の素晴らしさは味わうことができると思います。
「E=mc」20世紀最高の科学者アインシュタインの世界一有名な方程式です。高校時代に数学の教師から「相対性理論」についてわかったようでわからない説明を受け、発表された当時世界で理解できた人間が3人だか何人だかごく少数しかいなかったというエピソードだけ記憶に焼き付いたことを思い出しました。近代の重力の研究は「万有引力の法則」で有名なニュートンから始まりましたが、19世紀になって電気や磁気の理論との矛盾が出てきたのを解消したのがアインシュタインの相対論でした。20世紀になると量子力学が登場し相対論とともに物理学を支えてきましたが、その二つがうまくかみ合わない事がわかってきました。その矛盾を解決する新たな理論が超弦理論(超ひも理論)で、著者はその研究者です。
ニュートンの万有引力の法則を知らなければ人工衛星を飛ばすことはできなかったわけですが、アインシュタインの相対論がなければGPSで距離を正確に測定することができなかったことを本書で初めて知りました。本書には車椅子の物理学者として有名なホーキング博士も出てきて「ビッグバンの証明」や「ブラックホールの情報問題」という興味深い話が紹介されています。
それ以外にも世界的な物理学の巨人たちが何人も登場しますが、ノーベル賞を共同受賞した日本人の朝永博士が戦争による破壊と混乱の真っただ中、世界の他の部分からまったく孤立しながら新しい量子力学を独立して推し進めたという感動的なエピソードも紹介されています。本書で紹介されている科学者たちは世界的に評価されている飛びぬけた秀才、天才たちですが、そんな優秀な科学者のうちシュワルツのエピソードも興味をそそられます。当時のほとんどの研究者たちから見捨てられた理論をコツコツと10年にわたって研究し、ついに革命的発見を成し遂げたとのこと。我々凡人がすぐあきらめるのは良くないですね。
「重力の七不思議」や「伸び縮みする時間と空間」、「ブラックホールと宇宙の始まり」など興味深い話が満載ですが、理系の頭でない私の理解力ではうまく紹介しきれません。最初述べたように内容は分からなくても、10億×10億分の1メートルの素粒子の標準模型から10億×10億×10億メートルの光で見える宇宙の果てまでのことを考える人類の知的好奇心の一端にふれるだけでも読む価値がある本です。中3生は受験が終了すれば是非本屋で手に取って下さい。普段、新聞以外は漫画とゴシップ雑誌ぐらいしか読まない私にも生きている実感を味わわせてくれた本です。
武蔵関教室豊田

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