現在恵比寿の東京都写真美術館で行われている「世界報道写真展2013」をご紹介します。
筆者も昨日6月23日に見てきました。個人的に写真を撮ることが好きで、割と多くの写真展や絵画展覧会に行くことが多いのですが、そのほとんどがざっと見歩き、その中で自分の感覚に訴えかける作品の前でじっくり見ることがほとんどです。有名な作品でも1分立っていればいいほう。それほど多くの作品が自分の琴線に触れることはありません。最近では根津美術館で公開されていた尾形光琳の「国宝燕子花図屏風」がそれでした。けどそれは元々私自身が琳派が好きで尾形光琳をよく知っているから。尾形光琳のファンだからです。
しかし、今回の「世界報道写真展2013」では一つ一つの作品の前で足を止めざるを得ないくらいのエネルギーと力強さを感じました。世界の写真ジャーナルのすごさ、問題意識の高さをまざまざと見せつけられた写真展でした。
ある若手日本人女性写真家がイギリスで写真を勉強していたときに徹底的に叩き込まれたことが「なぜその作品なのか?」「なぜその一枚の写真が必然なのか?」「その一枚には語られるべきストーリーがあるのか?」だったという話を読んだことがあります。写真というのはその瞬間瞬間をフィルム(現在ほとんどがデジタル画像ですが)に焼き付ける非常に簡単な道具なのですが、しかし、その一枚から観る者の想像力をどこまで広げられるかが大切なのです。今回私が観た作品にはその多くが収められていました。
世界報道写真大賞2012にはスウェーデンのポール・ハンセン氏がパレスチナのガザ地区で撮影した作品が選ばれました。イスラエルのミサイル攻撃によって殺された2歳と3歳の子どもの遺体を抱きかかえ、悲しみと怒りをあらわにしながら歩く男性たちの姿を絵画的な光の中で捉えています。問題が複雑に絡み合って出口の見えない現地の状況が伝わってくる作品です。
写真美術館のサイトからの引用
作品群の多くが酸鼻を極めるものが多く、撮影場所も出口の見えない戦いを繰り返す中東パレスチナやシリアでのものが作品の三分の一を占めていました。市井の人々の悲しみに暮れる姿が私の体からも力を奪い取っていきました。「世界平和を」と声高にいくら叫んでも今世界には私たち日本人が想像もできない戦いが数多くあり、多くの命が消えています。そんな写真を眺めているといてもたってもいられない気分になりました。
もちろん東日本大震災をとらえた作品もあります。現代アメリカの暗部に光を当てた作品もあります。すばらしい動物たちの姿をとらえた作品もあります。そういった一級の報道写真を観て、何かを感じ考えることは十代の少年少女たちにとってもとても大切なことだと思います。もちろん大人にとっても。機会があればぜひ足を運んでいただきたく、このHPでご紹介いたしました。